医療法人社団KNIとNEC、 デジタルホスピタルの実現に向けたAI活用の実証効果を確認
2018年10月29日
医療法人社団KNI
日本電気株式会社
医療法人社団KNIとNEC、デジタルホスピタルの実現に向けたAI活用の実証効果を確認
~誤嚥性肺炎のハイリスク患者を87%の精度で抽出するとともに、看護記録業務の58%削減を実現~
医療法人社団KNI(所在地:東京都八王子市、理事長:北原 茂実、以下、KNI)と日本電気株式会社(本社:東京都港区、代表取締役 執行役員社長 兼CEO:新野 隆、以下 NEC)は、患者の入院長期化の回避による早期の社会復帰と、対応する病院スタッフの業務負荷軽減、医療サービスの質向上に向け、NECの最先端AI技術群「NEC the WISE」(注1)を活用した実証を行いました。
本実証は、「①誤嚥性肺炎のハイリスク患者の早期抽出」、並びに「②発話情報の分類・構造化技術による看護記録の質の向上と効率化の両立」で、それぞれにおいて効果を確認しました。①では、誤嚥性肺炎のハイリスク患者を87%の精度で抽出し、②では、看護記録業務の58%削減を実現しました。
KNIとNECは昨年10月より、AIを活用した医療・社会改革に向けた共創を開始しています。(注2)
両者は、KNIが目指す「医療をツールとした社会改革」のために掲げている、予防や地域医療まで包括する「デジタルリビングウィル(注3)」、「トータルライフサポートサービス(注4)」、AIを活用して医療の質向上と業務効率化を目指す「デジタルホスピタル(注5) 」の実現に向けて取り組みを進めており、今回の実証はこれらのうち、「デジタルホスピタル」の実現に向けた取組みの一つです。
今後、これらの取り組みを更に進化させ、患者への満足度の高い医療の提供と共に、病院スタッフの業務改革の両立を実現し、継続的な医療サービスの提供につなげます。
【背景】
超少子高齢化の進展に伴い、今後、医療の財源不足と人材不足はより深刻化していきます。限られた財源と人材で患者の増加と多様化するニーズに対応するためには、徹底した業務の効率化と医療の質の向上が必要となります。
KNIとNECは、これらの課題を解決する「デジタルホスピタル」の実現に取り組んでいます。
今回の実証では、入院長期化の主な要因となる患者の容体変化の予兆検知に向け、昨年発表した入院患者の不穏行動の予兆検知に続き、高齢者や脳卒中の入院患者における合併症の中で、最もケア業務負荷増大に影響のある誤嚥性肺炎のハイリスク患者の早期抽出に取り組みました。
さらに、音声入力によりデータ化された看護師の発話情報に、看護知識に基づく分類・構造化AIを適用することで、看護記録の質の向上と効率化の両立に取り組みました。
【今回の取り組みについて】
1.誤嚥性肺炎のハイリスク患者の早期抽出
現在、KNIのカルテ分析によると入院患者の約10%に合併症として誤嚥性肺炎の発症が確認されています。誤嚥性肺炎を発症した患者の70%は1ヶ月以上の長期入院となり、病院スタッフの業務負荷を増大させる要因になっていました。
今回の実証では、NECのAI技術「異種混合学習」(注7)の適用により、入院3日目までの電子カルテデータから、誤嚥性肺炎のハイリスク患者を87%の精度で抽出しました。これにより、看護師による該当患者への重点的な予防介入が可能となり、業務負荷を高めずに発症数を低減することができるとともに(注8)、患者の入院長期化の回避、対応するスタッフの業務負荷軽減が期待できます。今後は、さらに、AIを活用した誤嚥性肺炎の予兆検知の実現に取り組んでいきます。
昨年10月発表の不穏行動の予兆検知と合わせ、AIを活用した患者の容体変化の予兆検知により、患者の入院長期化の回避による早期社会復帰と、医療現場の負担軽減の両立に貢献します。
2. 発話情報の分類・構造化技術による看護記録の質の向上と効率化の両立
安全・安心な医療においては正確な記録が欠かせませんが、記録業務の増加は多忙な医療現場の大きな負担となっています。この解決策として、音声入力による記録業務の効率化が注目されています。しかし、KNIで評価したところ、発話情報をそのまま音声入力しただけでは、記録として整理されておらず、必要な情報の抜け漏れが確認しづらいという課題があることがわかりました。
そこで、NECのAI「テキスト含意認識」(注9)を用いて情報を自動的に分類・構造化する技術を開発し、看護師の発話をヒアラブルデバイスによるハンズフリー入力でデータ化した情報(発話情報)に適用しました。これにより、見やすく整理された記録をリアルタイムに作成することができました。
実証実験では、通常1日1人あたり約1時間かかっていた記録業務を58%削減できました。また、従来は約30分かけて実施していた対面での引継ぎ業務が不要となり、業務時間の短縮に寄与するだけでなく、整理された情報のリアルタイムな共有によりインシデント回避も期待できます。
KNIは近い将来訪れる超高齢社会とその先の未来においても、一般市民が安心・安全・快適な生活を送れるように、医療を起点とした社会改革を進めてまいります。
NECは、今後もAI・IoT技術をはじめとする先進ICTを活用した取り組みを通じて、医療におけるデジタルトランスフォーメーションを加速することで、医療における新たな社会価値の「共創」に貢献していきます。
以上
(注1) 「NEC the WISE」(エヌイーシー ザ ワイズ)は、NECの最先端AI技術群の名称です。”The WISE”には「賢者たち」という意味があり、複雑化・高度化する社会課題に対し、人とAIが協調しながら高度な叡智で解決していくという想いを込めています。
・プレスリリース NEC、AI(人工知能)技術ブランド「NEC the WISE」を策定
http://jpn.nec.com/press/201607/20160719_01.html
・NECのAI研究
http://jpn.nec.com/ai/
(注2) 『医療法人社団KNIとNEC、AIを活用した医療・社会改革に向けた共創を開始』http://jpn.nec.com/press/201710/20171023_01.html
(注3) デジタルリビングウィル:
基本医療情報や生活情報、様々な医療処置に対する承諾や遺言に至るまで全ての個人情報を蓄えておくシステム。事前に「脳卒中になった場合、手術を受けたいか」、「延命治療を受けたいか」など「会員の意思」を登録しておけば、意識を失って倒れてしまった場合にも「会員の意思」に沿った形でスピーディな治療、医療サービスを受ける事が可能となる。超高齢社会が抱える課題を解決するためのシステム。
(注4) トータルライフサポートサービス:
デジタルリビングウィルで登録された会員データをもとに、医療・介護サービスはもとより買い物代行から、家電、家屋の修理、ペットの預かり、自分のお葬式の用意、遺言書の作成支援に至るまで生活の全てを支援するサービスを受ける事が可能となる。
(注5) デジタルホスピタル:
様々なセンサーやAI技術により自動化された病院の概念。AIによって適切な診断や治療の提供が支援されることにより、医療の質の向上と業務の効率化が可能となる。
(注6) 不穏行動:
入院患者に起こり得る急性の錯乱状態で幻覚妄想、感情不安定、混乱などがある。
・2017年10月23日プレスリリース
『医療法人社団KNIとNEC、AIを活用した医療・社会改革に向けた共創を開始』http://jpn.nec.com/press/201710/20171023_01.html
(注7)異種混合学習技術:
人手では困難であった複雑な予測についても、多種多様なデータの中から精度の高い規則性を自動で発見し高精度な結果を得ることができる解析技術。
https://jpn.nec.com/ai/analyze/pattern.html
(注8)北原国際病院での実証(期間:2018年8月9日~2018年10月9日)における結果。
(注9)テキスト含意認識
二つの文が同じ意味を含むかどうか判定する技術です。文表現が異なっても意味が同じものを取りこぼすのを防ぎます。
https://jpn.nec.com/ai/analyze/text.html
※本紹介は技術実証の紹介であり、販売・授与はできません。
<本件に関する報道関係からのお問い合わせ先>
医療法人社団KNI 広報責任者 亀田
E-Mail:Yoshikazu_Kameda@kitaharahosp.com
NEC コーポレートコミュニケーション部 根本
電話:(03)3798-6511
E-Mail:a-nemoto@ia.jp.nec.com
<本件に関するお客様からのお問い合わせ先>
医療法人社団KNI デジタルホスピタル責任者
E-Mail:Teppei_Shimizu@kitaharahosp.com
NEC 医療ソリューション事業部
E-Mail:dh_press@med.jp.nec.com
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